日本科学未来館で開催されている企画展「THE 世界一展~極める日本!モノづくり~」に行ってきましたので、今回の記事ではその様子をお伝えします。
この企画展では、「日本のモノづくり」というテーマの下、日本が持っている伝統技術や最先端の技術・プロジェクトを、解説や動画と共に紹介しています。私たちになじみ深い「衣食住」に関する技術から、衛星や望遠鏡、超高層建築などに使われている技術まで、本当に様々な展示が行われていますが、今回の記事では電子部品・半導体に関する技術に注目して、いくつかご紹介したいと思います。
・アルミ電解コンデンサ用セパレータ(ニッポン高度紙工業株式会社)
皆さんが普段使っている電解コンデンサには、「セパレータ」と呼ばれる特殊な紙が使われています。このセパレータは、コンデンサのアルミ箔が接触しないようにする役割を担っており、異物を含まず、密度・厚さが一定であることが求められています。このセパレータを作る技術には、なんと和紙を作る技術が応用されており、まさに伝統と最先端技術の融合と言えます。
・裏面照射型CMOSイメージセンサー”Exmor R”(ソニー株式会社)
こちらは、デジタルカメラなどに使われているCMOSセンサーです。ビデオやカメラで動画を撮影する際には、できるだけ多くの光をセンサーに届ける必要があります。このCMOSセンサーは、高速かつ低電力という利点がある一方で、暗い場所では写真にノイズが載ってしまうという欠点がありました。そこで、従来は受光部の前に配置されていた配線を、受光部の裏側に設置したことで、センサーの感度を上げることに成功しました。皆さんがスマートフォンで綺麗な夜景を撮ることができるのも、このCMOSセンサーのおかげなのです!
・ダイシングソー(半導体ウェハー切断装置)(ディスコ)
ダイシングソーとは、半導体素材であるシリコンウェハー(写真中央)を、写真右下のようにチップ上に切断するための装置です。ブレード(写真左下)という円状の砥石を高速回転させることで半導体を切断します。その精密さはなんと、髪の毛の断面(直径0.05mm~0.15mm)を35分割、シャープペンの芯(直径0.5mm)を850分割できるとのことです!ダイシングソーの世界シェアは約9割を日本企業が占めており、世界中の電子機器生産を支えているのです。
・積層セラミックコンデンサ(株式会社 村田製作所)
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、皆さんにも非常になじみ深い素子だと思います。こちらに展示されていた世界最小の積層セラミックコンデンサは、なんと0.25mm×0.125mmという小ささで、肉眼で見るとまるで点のようでした。最新のスマートフォンには、MLCCが500~700個も搭載されているそうです。
・超極小ボールベアリング(ミネベア)
こちらは、精密機器で摩擦を低減するために使われているボールベアリングです。写真に写っているのは、2009年に開発された、世界最小(外径1.5mm)の超極小ボールベアリングです。医療機器やマイクロマシンなどの精密機器への利用が提案されています。映画「ミクロの決死圏」の世界が現実になる日も近いかもしれません。
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様々な技術を取り上げてきましたが、いずれの技術からも日本人が持っている「器用さ」「きめ細やかさ」が伝わってきます。普段暮らしている中では、家電や車などの既に出来上がっている製品しか目にすることができませんが、その背景には今回取り上げたような、目立たないけれど非常に繊細・重要な技術が詰まっているのです。
今回の記事では半導体関連の技術しか取り上げませんでしたが、その他にも下の写真のように様々なものが展示されていましたので、あまり細かい技術に興味がない方でも十分に楽しめると思います。こちらの企画展は今年の5月6日まで開催されているので、興味を持った方は是非、日本科学未来館を訪れてみてください!